道で人が倒れていたら:立ち止まる判断と、助けるときの対応

第13章・第2項「高齢者の転倒や突然の倒れ込みを見ても、すぐに抱き起こさない」の補足です。この手帳では、誰が利益を受けるかを、その利益が将来自分に返ってくる可能性によって4段階に分けています。見知らぬ人は、自分との関係が最も遠い位置にあります。相手の事情も分からず、見返りを期待できるわけでもありません。ここでは3つの選択肢に伴う負担を整理し、判断の材料を示します。

発生確率は示しません。 以下に挙げる負担は起こり得るもので、関連する条文もあります。しかし、助けた人の何%が実際に巻き込まれるのかを示す公開統計はありません。「7段階ある」ことを「7つとも起こる」と読み替えないでください。

法律と電話番号は中国本土のものです。日本など他の国における救助義務の説明ではありません。

3つの選択肢

立ち去る 立ち止まるが、身体には触れない 立ち止まり、その後も対応する
ここで想定する一般の通行人の法的立場 原則として適法。見知らぬ人を救助する一般的義務や、単に救助しなかったこと自体を処罰する犯罪はない 適法 適法
時間 かからない 数分。中国の救急番号120に電話すると番号が記録される 半日以上になることもあり、病院への付き添いが必要になる場合もある
後から連絡を受ける可能性 3つの中では最も低い 電話番号を残した人になる 3つの中では最も高い
相手が受ける助け ない 救急車の到着が早まる可能性がある 最も大きくなり得る

この比較は定性的な整理であり、測定されたリスクではありません。

立ち止まった後に生じ得る負担

1. 折り返しの電話や事情確認。 120や警察の110へ通報すると、電話番号が残ります。場所の確認で折り返しが来たり、後日、事情を聞かれたりする可能性があります。刑事事件の通報者が氏名の公表を望まない場合、捜査機関は秘密を守らなければなりません〈刑事訴訟法第111条〉。120への電話について、原資料はこれに相当する規定を確認していません。

2. 負傷者の家族から連絡される。 監視カメラで事故を起こした車が見つからなければ、家族が連絡を取れる相手として、その場にいて電話番号を残したあなたが浮かぶことがあります。繰り返し電話が来たり、直接訪ねてきたりする可能性もあります。

3. 民事訴訟に巻き込まれる。 「あなたがぶつかった」と主張する側には、それを裏づける証拠が必要です。証拠を示せない不利益は主張した側が負います〈民事訴訟法司法解釈第90条〉。ただし、この原則が決めるのは最終的な判断であり、訴えに巻き込まれないことを保証するものではありません。 通常手続きの第一審は原則6か月以内、特別な事情があるとさらに6か月延長される場合があります。簡易手続きは3か月です〈民事訴訟法第152・164条〉。

勝訴しても、訴訟費用納付弁法第6・29条で扱う費用は、事件受理費、申請費、証人・鑑定人の出廷に伴う所定の交通費や宿泊費、生活費、休業損失などです。自分が依頼した弁護士の費用は、この3つの費用区分には含まれません。 この一般的な費用負担の規定だけで取り戻せるとは限りません。

4. 職場に押しかけられる。 職場で騒がれて仕事ができなくなった場合は警察に通報できます。治安管理処罰法第26条第1号では、企業や事業単位の秩序を乱す行為に警告または500元以下の罰金、情状が重い場合は5~10日の拘留と1,000元以下の罰金を定めています。集団で騒ぎを起こした首謀者は10~15日の拘留です。執拗な嫌がらせ、つきまとい、追跡で日常生活を妨げる行為は第50条第5号の対象となり、公安機関の責任者の承認により、一定期間の接触禁止を命じられる場合もあります。金額は人民元です。

この件を理由に会社が解雇した場合、原資料は一般に違法な労働契約解除となり、賠償額は2Nで計算すると説明しています。第19章・第6項を参照してください。ただし、通報や労働仲裁には自分の時間が必要です。後で賠償を得ても、失職していた時間そのものが戻るわけではありません。

5. 撮影され、ネットに載る。 あらゆる撮影を止められるとは限りません。 民法典第1019条は、原則として本人の同意なく肖像を制作・使用・公開することを禁じています。一方、第1020条第2号は、報道のため避けられない肖像の使用を適法な利用として認めています。記者による報道撮影がこの例外に当たる場合があります。それでも、取材を断る、出演に協力しない、カメラの前で話さないという選択は自分でできます。他人があなたに代わって出演を承諾できるわけではありません。

6. 動画が拡散し、非難が集まる。 動画が広まると、コメント欄は自分では管理できません。中国の「ネット暴力情報管理規定」〈2024年8月1日施行〉には、利用できる保護機能が定められています。第23条では、知らない人や特定のアカウントのブロック、情報の公開範囲の制限、転載・コメントの禁止、友人以外または全員からのダイレクトメッセージの拒否などを挙げています。第25条はワンクリックで証拠を保全する機能、第26条は目立つ位置にある専用の迅速な苦情・通報窓口を求めています。違法行為や犯罪の疑いを発見した場合、プラットフォームは速やかに公安機関へ通報し、手がかりを提供する義務があります〈第15条〉。自分で証拠を残す方法と通報は第8章・第15項を参照してください。

7. 気持ちが持ちこたえられなくなったとき。 最初の6つには対応の根拠となる条文がありますが、継続的な攻撃による心の負担を条文で測ることはできません。原資料は、中国国内の信頼できる数値を確認できなかったため、数字を示していません。相談先として、中国の心理支援ホットライン12356を挙げています。第1章・第25項を参照してください。

単なる通行人とは立場が異なる2つの場合

  • 施設の運営者・管理者、または大規模な活動の主催者である。 ホテル、商業施設、銀行、駅、空港、スポーツ施設、娯楽施設などの運営者・管理者や、大衆的な活動の主催者には、安全を確保する義務があります。義務を果たさず損害を生じさせた場合には不法行為責任を負います。他人が直接の原因を作った場合でも、自分の安全確保義務を怠れば、その責任範囲で補充的な責任を負うことがあります〈民法典第1198条〉。責任のある施設側や担当職員と、無関係な通行人では立場が異なります。
  • 危険の発生に自分が関係している。 自分がぶつかった、自分の車が関わった、以前の自分の行動で危険を作った場合は、見知らぬ人を助けるかという話だけでは済みません。交通事故への対応と現場からの逃走を扱う第8章・第1項を参照してください。

立ち止まると決めたら

  1. 反射的に抱き起こしたり、不必要に動かしたりしない。 不適切な移動は脳出血や脊椎の損傷を悪化させるおそれがあります。民法典第184条は、自発的な緊急救助で生じた損害について民事責任からの保護を定めていますが、適切な応急手当が必要なことに変わりはありません。
  2. 近くから声をかけ、反応と正常な呼吸を確認します。反応がなく正常に呼吸していない場合は、救急を呼び、第13章・第1項の心肺蘇生を始めます。呼吸がある場合も120へ電話して正確な場所を伝え、指令員の指示に従ってください。
  3. ほかの通行人にも一緒にいてもらいます。原資料は、当時の状況を残すためのスマートフォン撮影も勧めています。ただし、撮影のために緊急の救助を遅らせないでください。
  4. 1人で車へ持ち上げて運んだり、病院の費用を自分が立て替えなければならないと思い込んだりしないこと。身体的・金銭的・事後対応の負担を増やすことがあります。
  5. 救助によってけがをしたり費用を負担したりした場合の回収方法は、第13章・第39項で扱っています。

出典

  • 全国人民代表大会〈2020〉民法典、第184・1019・1020・1198条。最高人民検察院による全文転載。https://www.spp.gov.cn/spp/fl/202006/t20200602_463888.shtml
  • 最高人民法院〈2022年第2次改正、2022年4月10日施行〉中華人民共和国民事訴訟法の適用に関する解釈、第90条。https://www.court.gov.cn/zixun/xiangqing/353651.html
  • 全国人民代表大会常務委員会〈2023年改正、2024年1月1日施行〉民事訴訟法、第152・164条。上海市発展改革委員会による転載。https://fgw.sh.gov.cn/ys-syjf-zc-2.4.1-h5/20240408/073febdb2b04464390546232d4089f51.html
  • 国務院〈2006〉訴訟費用納付弁法、国務院令第481号、第6・29条。https://www.gov.cn/ziliao/flfg/2006-12/29/content_483682.htm
  • 全国人民代表大会常務委員会〈2025〉治安管理処罰法、2025年改正・2026年1月1日施行、第26条第1号・第50条第5号。https://www.spp.gov.cn/spp/fl/202506/t20250627_699863.shtml
  • 全国人民代表大会常務委員会〈2018年改正〉刑事訴訟法、第111条。寧夏回族自治区人民検察院による転載。https://www.nx.jcy.gov.cn/zwsy/qwfb/202011/t20201119_608817.html
  • 国家インターネット情報弁公室、公安部、文化観光部、国家広播電視総局〈2024〉ネット暴力情報管理規定、第15・23・25・26条、2024年8月1日施行。国務院公報。https://www.gov.cn/gongbao/2024/issue_11526/202408/content_6969181.html