進行中の侵害は防衛できるが、相手がやめたら自分もやめる
自分や他者への違法な侵害が進行しているとき、それを止める正当な防衛で相手を負傷させても刑事責任は負いません。現に行われている殺人、強盗、強姦、誘拐など重大な暴力犯罪への防衛では、相手を死傷させても防衛過剰にならない規定があります。ただし対象は侵害者本人で、侵害が終わればやめます。最終的に正当防衛と認められても、先に立件・拘束される可能性はあります。
必要なこと
中国の弁護士費用は数千元からで、経済的困難があれば法律援助を申請できます。主な負担は事後にあり、まず傷害事件として捜査され、調査への協力や十数日の拘束が生じることもあります。その間も落ち着いて対応する必要があります。
期待できること
中国刑法第 20 条は、国家・公共の利益、自分や他者の身体・財産その他の権利に対する進行中の不法侵害を止めるため、侵害者を負傷させる正当防衛に刑事責任を認めません。必要な限度を明らかに超え重大な損害を生じさせた場合は責任を負うものの、減軽・免除すべきとします。また、現に行われる凶暴な襲撃、殺人、強盗、強姦、誘拐、その他身体の安全を著しく脅かす暴力犯罪への防衛で侵害者を死傷させても、防衛過剰ではなく刑事責任を負いません。最高人民法院・最高人民検察院・公安部の指針は、過剰には限度の明白な超過と重大な損害の両方が必要とします。重大な損害とは重傷・死亡で、軽傷以下は含みません。侵害が終わるのは、侵害者が実際に能力を失うか、明確に放棄した場合です。防衛の対象は侵害者本人に限り、明らかにごく軽い侵害と分かるのに重傷・死亡を生じ得る方法を使えば、防衛とは認めません。手続きの負担を示す公式例があります。検例第 47 号の于海明事件は、2018 年 8 月 27 日夜に公安が故意傷害として立件し、9 月 1 日に昆山市公安局が刑法第 20 条第 3 項の正当防衛と認めて取り消しました。検例第 45 号の陳某事件では、学生が 9 人に囲まれて殴られ、刃物で反撃して 3 人を重傷にしました。公安は故意傷害容疑で拘留しましたが、検察が正当防衛として逮捕を承認せず、そこで釈放されました。拘留後に逮捕が必要と考える公安は通常 3 日以内に検察へ承認を請求し、特別な場合は 1〜4 日延長、流動的・反復的・集団的な犯行の重大容疑者では 30 日まで延長できます。検察はさらに 7 日以内に決定します(中国全国)。
適用条件と注意点
通常は項目 10のように離れて通報する行動を優先します。相互のけんかや、侵害が終わった相手を追って殴ることは防衛ではありません。原文は逃げ場がない場面で反撃を考えるよう勧めています。事後は、通報後に現場を離れない、監視映像と目撃者を確保する、正式な取調べ前に弁護士を頼む(項目 5)、の 3 点です。指針は公安に現場の映像・録音の速やかな取得と目撃者の聴取を求めています。事件取消し、不起訴、無罪となった場合の拘束日数に応じた国家賠償は、条件を含め項目 35を参照してください。他者を守る防衛も法律は認めますが、見知らぬ人同士の乱闘へ素手で入る危険は別です(第 13 章の項目 37)。主な受益者は自分と家族です。
研究と参考資料
全国人民代表大会(1997)。刑法、第 20 条。https://www.spp.gov.cn/spp/fl/201802/t20180206_364975.shtml。最高人民法院・最高人民検察院・公安部(2020)。正当防衛制度の適法な適用に関する指導意見(法発〔2020〕31 号、第 5・6・7・10・11・13・14・19 項)。https://www.court.gov.cn/zixun/xiangqing/251611.html。最高人民検察院(2018)。第 12 次指導事例、検例第 45 号・陳某正当防衛事件、第 47 号・于海明正当防衛事件。https://www.spp.gov.cn/spp/jczdal/201812/t20181219_402920.shtml。全国人民代表大会常務委員会(2018)。刑事訴訟法、2018 年改正、第 91 条。https://www.nx.jcy.gov.cn/zwsy/qwfb/202011/t20201119_608817.html(寧夏回族自治区人民検察院全文転載)。