健康と長寿ヒント 33 · 約 5 分

「助かれば元どおり」とは限らない。農薬やガスによる中毒では、命が助かっても肺や脳に障害が残ることがある

根拠の等級 B費用対効果:とても高い
ひとことで言うと

パラコートには解毒薬がなく、飲んだ人の 4 割以上は救命できません。肺に炎症と線維化を起こし、腎臓と肝臓も傷めます。一酸化炭素中毒で救命された人は 6 週間後も半数近くに認知面の後遺症があり、高気圧酸素療法を受けても約 4 分の 1 に残りました。

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期待できること

パラコート中毒の系統的レビューでは、強い毒性と有効な治療の不足から致死率が極めて高いとされています。濃度勾配に逆らって肺組織に能動的に取り込まれ、肺炎、肺線維症、腎障害、肝障害を起こします。レビューは胃洗浄を行うべきではなく、血液透析や血液灌流も臨床経過を変える可能性が低いと記しています。ステロイドと免疫抑制薬の効果の根拠は弱く、治療内容が大きく異なってもすべての施設で致死率は高いとしています。バングラデシュの 10 か所の三次医療病院で 2013~2024 年に集まった 1420 例のうち、解析可能だった 257 例の致死率は 43.2% でした。よく見られた症状は急性腎不全による下肢浮腫 71.2%、嘔吐 65.8%、腹痛 58.0% です。急性一酸化炭素中毒の二重盲検無作為化試験では、医師も患者も割り付けを知らず、各群 76 人でした。6 週間後の認知後遺症は高気圧酸素群で 19/76(25.0%)、通常圧酸素群で 35/76(46.1%)、P=0.007 でした。他の要因を調整後の OR は 0.45(95% CI 0.22~0.92)です。別の連続 73 例の観察では、30% に認知後遺症、12% に脳白質の高信号所見がありました。中国では 2014 年 7 月 1 日からパラコート水剤の登録と生産許可を取り消し、生産を停止しました。2016 年 7 月 1 日から国内での水剤の販売・使用を停止し、2020 年 9 月 26 日から可溶性ゲル剤の国内販売・使用も禁止しました。文書は、パラコート服用による自殺が相次ぐことを規制強化の直接の理由としています。

適用条件と注意点

B としたのは、対象が中毒患者であり、自殺未遂者だけではないためです。一酸化炭素の試験には事故による中毒も含まれ、後遺症の割合をそのまま「自殺未遂後の確率」とはできません。確かなのは、後遺症を残さないことが保証される方法はないということです。一酸化炭素の現場対応は第 13 章の項目 19、農薬・薬の誤飲で吐かせず容器を持って受診することは同項目 20、農薬や睡眠薬をため込まないことは本章の項目 25を参照してください。本書は手段ごとの致死率を比較せず、具体的な方法も記しません。

研究と参考資料

Gawarammana IB, Buckley NA (2011). Medical management of paraquat ingestion. British Journal of Clinical Pharmacology, 72(5), 745-757. https://doi.org/10.1111/j.1365-2125.2011.04026.x;Chowdhury FR ほか (2026). Clinical and Laboratory Profile of Paraquat Poisoning: A Toxicological Crisis in Bangladesh. American Journal of Tropical Medicine and Hygiene, 115, 176-182. https://doi.org/10.4269/ajtmh.25-0719;Weaver LK, Hopkins RO, Chan KJ, et al. (2002). Hyperbaric oxygen for acute carbon monoxide poisoning. New England Journal of Medicine, 347(14), 1057-1067. https://doi.org/10.1056/NEJMoa013121;Parkinson RB, Hopkins RO, Cleavinger HB, et al. (2002). White matter hyperintensities and neuropsychological outcome following carbon monoxide poisoning. Neurology, 58(10), 1525-1532. https://doi.org/10.1212/wnl.58.10.1525;中国農業農村部弁公庁 (2018)「パラコートの監督管理の着実な強化について」(農弁農〔2018〕17 号)。https://www.gov.cn/zhengce/zhengceku/2018-12/31/content_5442594.htm